ルネサンス試聴コーナー

ルネサンス音楽を聴いてみよう!

複数の方から、ルネサンス音楽って具体的にどういう音楽なんですか、というご質問をいただいたので、 団員有志(計11名)が東京春のコーラスコンテスト2013で入賞した際の録音を、ご紹介したいと思います。 コールアカデミーは男声合唱団なので、一部のメンバーはカウンターテナーを用いて、非常に高い音程を歌っています。

パレストリーナ『ミサ・ブレヴィス』より「キリエ」
"Kyrie" from "Missa Brevis" by Giovanni Pierluigi da Palestrina

パレストリーナ(1525?-1594)は、イタリア・ルネサンス後期の作曲家です。 教会音楽の父ともいわれる、ルネサンス音楽に触れるうえで絶対に外せない人物のひとりです。

宗教曲を中心に、生涯に少なくとも300以上の作品を遺した多作の人であり、 またそれらの作品は、厳格な作曲スタイルに基づくポリフォニックな(明確なメロディの存在しない)ものでした。 後世になり彼の作品の研究が進むと、やがてそのスタイルは「パレストリーナ様式」と呼ばれるようになり、 現在でも、音楽理論のひとつの頂点とみなされています。

今回は、そうした彼の作品の中から、やや日常的なミサで用いられるものを選びました。 全編となると少々長いので、序曲のみですが、まずはルネサンス音楽の雰囲気をお楽しみください。

こちらをクリックすると演奏を聴くことができます。

また、楽譜を合唱パブリックドメインライブラリーから見ることができます。

ビクトリア『エラム・クァジ・アニュス』
"Eram Quasi Agnus" by Tomas Luis de Victoria

ビクトリア(1548-1611)は、スペイン・ルネサンス、特に16世紀を代表する作曲家のひとりです。 教会音楽の分野では、パレストリーナに次ぐ大家だとする人も多いようです。

現存する彼の作品はすべて宗教曲であり、その意味ではパレストリーナ以上に情熱的な宗教家でしたが、 やや下の年代ということもあってか、その作曲スタイルはやや柔軟です。 そのため、しばしばホモフォニックな(メロディとハモりが分かれているような)雰囲気をまとった作品、 あるいはイタリア・ルネサンス発祥のマドリガーレ(詞に合わせて抑揚をつけるスタイル)を取り入れた作品もみられます。

今回ご紹介するのは、彼が得意としたジャンルのひとつである、レスポンソリウム(教会の定時の祈りで用いられる歌曲)です。 パレストリーナよりもどこか感情的な、スペインならではのニュアンスが加わります。

こちらをクリックすると演奏を聴くことができます。

また、楽譜を国際楽譜ライブラリープロジェクトから見ることができます。

フレーチャ『テレジカ・エルマーナ』
"Teresica Hermana" by Mateo Flecha el viejo

フレーチャ(1481-1553)は、ルネサンス期にカタルーニャ地方(フランスとスペインの境目あたり)で生まれた作曲家です。 彼の甥(おい)も同姓同名の作曲家ということで、区別のために「古いほう el viejo」「若いほう el joven」と書いてあったりします。

上記ふたりの作曲家とは違い、彼の得意分野は「世俗曲(非宗教的なモチーフの曲)」でした。 当時のスペインの世俗曲においては、ビリャンシーコ(Villancico)と呼ばれる、スペイン民謡にルーツを持つ独特のポリフォニック・スタイル、 あるいは、エンサラーダ(Ensarada)と呼ばれる、当時の西・仏・伊・羅の歌曲のエッセンスが混在した奔放なスタイルが流行していたといいます。 彼が得意としたのも、まさにこうした、ストイックな教会音楽とは正反対のスタイルでした。

今回は、ビリャンシーコの中から、村娘テレジカと彼女を狙う青年の「怪しげな」やりとりをモチーフにした、有名な小品を取り上げます。 ラテン系だから、あからさまに愛をささやくのかと思いきや、どうやら様子が違うようで…。

今回の録音では、元になった詩のうち、テレジカと青年のやりとりにあたる部分(101小節まで)を演奏しています。

こちらをクリックすると演奏を聴くことができます。

また、楽譜を合唱パブリックドメインライブラリーから見ることができます。

というわけで、特別企画「ルネサンス音楽を聴いてみよう!」でした。 もちろん、今回ご紹介した曲の向こう側には、さらにバラエティ豊かで、奥深いルネサンス音楽の世界が広がっています。 通販サイト(アマゾンなど)で検索すれば、初心者向けのCDや新書も簡単に購入できるので、興味の出てきた方はぜひ手に取ってみてください。

もちろん、コールアカデミーの演奏会でも色々な曲が聴けますし、入団すれば専門家の手ほどきを受けつつ歌えます!

皆さんのご来場、あるいは入団、心よりお待ちしています!